私がこれから何を述べようとしているのかを一目で解っていただくために、図解を載せます。
Tips001 "田"の部分
実際の塔婆 令和元年 "年"の二画目がちょっと右に短い出来です。(-_-;
Tips001:田口見目 の書き方
Tips002:令和元年 の書き方
Tips003:未来寿智 の書き方
Tips004:ハ八光永 の書き方
Tips005:あお思恩 の書き方
Tips006:日二伊書 の書き方
Tips007:行徳禅照 の書き方
Tips008:大進美増 の書き方
Tips009:寺 時 等 の書き方
Tips010:羽 比 林 の書き方
Tips011:工 上 下 の書き方
接筆(せっぴつ:漢字の画と画の接し方:先に書いた画に対して、後から書く画の位置関係及び重ねるのか、接するのか、離すのか、またその度合い。)、書き方のポイントとルールには諸説ありますが、私が実際に気に入って書いている書き方を紹介します。
お手本としては心もとない筆文字ですが、加筆した説明をご覧になると、
「なるほど!」「これなら出来そうだ!」と感じていただける事でしょう。
筆文字の書き方を丁寧に解説してくれる書道教本は沢山有ります。最初に歴史、書く時の姿勢、筆の持ち方、基本的な線の書き方などが綴られていて、お手本が並び、縦長に書くとか、ここは三本の間隔を均等にとか色々と語られますが、読むだけで上達を実感するまでにたどり着くのは長い道のりです。
工学とは、WEBSITE 国語辞書:大辞泉によると
こう‐がく【工学】
『 基礎科学を工業生産に応用するための学問。機械工学・土木工学・電子工学などのほか、人間工学などその研究方法を援用した自然科学以外の分野のものにもいう。』 と有ります。
筆文字を書くと言う生産行為をより上質に達成する為に、基礎的な書道教本を利用して、筆文字の接筆に重点を置きながら、書き方のポイントとルールを身に付けて実現するのが、書道工学です。
まず、自分の名前を一度筆で書いてみましょう。そして、私のこの文書を読んだ上で書道教本に目を通し、もう一度自分の名前を書いてみましょう。きっと筆文字が進化しているはずです。それはもしかしたら、一文字だけの一画だけの小さな進化かもしれませんが、上達が実感出来るはずです。
そして、何度も書道教本と接し、色々な筆文字を書いて、沢山の気付きに満たされたとしたら、あなたはきっともっと上手に筆文字を書けるようになるはずです。そういう『システム』が身に付くはずです。そう、『気付き』が最も大切な事なのです。
筆文字を上手に書く為には、書きたい文字をレタリング出来る事が一番重要だと昔から思っていました。書きたい筆文字を、レタリング出来なければ…、つまり完成形が解っていなければ、筆文字は絶対上手く書けません。また、書き順も、とても大切です。一文字一文字気付いた時に、調べて身に付ける必要が有ります。
起筆(一画の始まり)、収筆(一画の終わり:止める、はねる、払う)、曲がり、点など色々な基本的な筆の技術の習得も必要です。それは訓練するしかありません。
当たり前ですが、【書きたい筆文字のレタリングが頭の中に出来て】、【基本的な筆の技術が身に付けば】誰でも上手な筆文字が書けます。
しかし、この WEB SITE 書道工学に目を通していろいろな事に気付けば、例え基本的な筆の技術が不十分であっても、大きく前進出来るはずです。起筆、収筆等が不完全であっても、それはむしろ文字の個性として評価される部分であり筆文字としては前進です。
筆文字は、紙や木地に塗りつぶす範囲を示す線が目に見えない透明な色で描かれている塗り絵を、一画毎に墨で染める事なのです。
私は、『なんとか楽して上手な筆文字が書けないだろうか?(「楽して」とは、短時間で効率的に上達する事を意味しています。)』、『上手に見える筆文字を書くにはどうしたら良いのだろうか?』、『完璧でなくて良いから、少しでも綺麗に見える筆文字は?』と考えました。
そして、ある時に出会ったのは、筆文字の接筆と書き方のポイントとルールを教えてくれる書道教本 @【楷書の基本100パターン 江守賢治著 出版社:日本習字普及協会】でした。それは、例えば『うかんむり』、『さんずい』、『れっか』、『しんにゅう』などの部首ごとにポイントとルール、そして接筆を説明してくれるとともに、『口』、『日』、『女』など、漢字のどこか一部に頻繁に出現する部分をパターン化して丁寧に説明してくれています。(この本には、漢字の読みの索引は有りません。部首やパターン別に一括で説明されています。)
この本は、接筆が、如何に重要で有るのかを教えてくれました。「接筆」で検索すると興味深いサイトがネット上には沢山有ります。是非、検索してみてください。
『そうか。このポイントを押さえれば筆文字が上手に見えるんだ。』、『今まで、ずっと間違えたルールで書いていたんだ。』、『なるほど、こういう接筆なんだ。』と沢山の気付きが有りました。そして、『この本さえ有れば、何とかなるかもしれない。』とその時私は思いました。
しかし、それだけでは、どうしても自分の上達は頭打ちになってしまいました。 『この本は、筆文字の接筆と書き方のポイントとルールを丁寧に教えてくれる。でも、それだけでは、書きたい筆文字の接筆はどうすれば良いのだろうか? 書き方のポイントがいったいどこなのか? ルールは何なのか? それを探すのは容易ではない。』と考えるように私はなっていました。
次に私が手にしたのが A【現代毛筆三体事典 續木湖山編著 出版社:教育出版】でした。その本は、一文字一文字毎に、筆文字の接筆と書き方のポイントとルールについて述べられていました。(この本には、漢字の読みの索引が有ります。調べたい文字を索引から探す事が出来ます。)
そして、これらの二冊の本から、私は手本の見方を身に付ける事が重要なのだと言う事に気付きました。答えよりも考え方、その考え方へ到達する為の工夫こそが『書道工学』なのです。
今まで何気なく書いていた筆文字を、一度手本を見て『そうか! ここはこうなるんだ。』と気付き、少しの考え方、見方を変えた時に、私は、自分の中で一歩上達への道が開けたと思えました。
もう一冊私が持っている本は、B【上品な字の書き方 著者:有田幸正 出版社:日貿出版社】です。ユニークな表現で楽しく読める本です。(この本は、パターンからの説明部分と、漢字の読みの索引が有ります。索引から探せる文字を、楷書をペン字で、行書を筆文字で教えてくれます。)
さらに、もう一冊私が持っている本は、索引付きで書き順を教えてくれる本です。
【まるで本のPRのようですが、決してそうではありません。念の為】
私は、@、A、Bの三冊の本を見つけました。私の示した本でなくても良いので、【接筆を教えてくれる本】、【文字の部首やパターンごとに筆文字の書き方のポイントとルールを教えてくれる本】、【書き順を教えてくれる本】などを是非自分で図書館や本屋で探してみてください。
自分に合った書道教本を見つけることが大事なのです。手当たり次第に書道の本を10冊ぐらい見てください。この WEB SITE 書道工学の図解 Tips001に書いた『田、口、見、目』の文字をそれらの本で確認してみてください。
色んな攻略方法が有るという事、言わんとする所はどれも同じなんだという事に気付くでしょう。また、解説の記述は無くても、手本がセオリーどおりの接筆で書いて有る本にも数多く出会う事が出来ます。
私の持つ書道教本に書いてある事を幾つか紹介します。
接筆、書き方のポイント、そしてルールには諸説ありますが、私が実際に気に入って書いている書き方をご紹介します。
例えば、
・『口』の三画目の始点は、一画目の下端より少し上に接するように書き始め、終点は、二画目の下を通り、二画目より少し右に出る。(おのずと、二画目の縦画は一画目の縦画より短く書いておく必要がある。)参照
Tips001 (口)
・『日』の三画目の始点は、一画目に接し、終点は、二画目に接せず線の幅分の空間を取る。四画目の始点は、一画目の下端より少し上に接するように書き始め、終点は、二画目の下端より少し上に接する。一画目と二画目の終点は、四画目よりも下に出ている。参照 Tips006 (日)
・『田』の四画目の始点も終点も一画目と二画目に接しない。二画目側には線の幅分の空間を取る。五画目の始点は、一画目の下端より少し上に接するように書き始め、終点は、二画目の下端より少し上に接する。一画目と二画目の終点は、五画目よりも下に出ている。参照
Tips001 (田)
・『二』(漢数字の二)の一画目の終点には、二画目の始点に向けて左下に伸びるヒゲ(セの右肩の部分に現れるハネのように見える部分)を付けると、上手に見える。参照
Tips006 (二)
ここから先はクイズ形式で書きます。 <一部の答えは " Tips "の中に有ります。>
・伊、書、事などの『コ』となる部分の右下の交差の具合はどのようにするのでしょうか? 静、争、鳥なども同様です。大きく二つのパターンに分かれています。
・『見』の 目 の部分の一番下の横画は、どのようになっているでしょうか? 観、現なども『見』を含んでいます。
・『貝』の 目 の部分の一番下の横画は、どのようになっているでしょうか? 預、項なども『貝』を含んでいます。また、その下の二つの点の位置はどうなっているでしょうか?
・『只』、『祝』の 口 の部分の一番下の横画は、どのようになっているでしょうか? 競の中の口の部分もどのようなバランスからなっているでしょうか?
・『遠』の 口 から真下に出る縦画はハネルか? ハネナイか?
・シンニュウのバランスはどう取るのか?
・『共』の下の点二つは、上に接するでしょうか。同様に、『供』、『興』の下の点二つはどうでしょうか?
・『行』の一画目の延長線と二画目の延長線は、平行でしょうか?『須』の一、二、三画目も、その延長線はどうなるでしょうか?
・『夫』『英』のそれぞれの最終画は、払うのか止めるのか?
・『美』『光』のそれぞれの上部の『ソ』となる部分のは、どのような形で糸を引いているように見せるのか?
一つずつ身に付けていけば、かなりの知識になるでしょう。さらに、新しい疑問を自分なりに見つけて、本で調べて解決してください。きっと、いつも書き慣れていた筆文字に、知らなかった事が沢山潜んでいる事に気付くはずです。同様な事は、ひらがなについても言えます。
梵字も同様です。まず、『梵字の書道教本を見つける事』、そして、自分なりに『書き方のポイントとルールを見つける事』です。
そして、他所のお塔婆や護摩札などを見て、気に入った書き方の :『a字』や :『ka字』などを見つけて真似て書きましょう。真似る事も上達方法だと思います。これは、基本的に漢字についても言えます。
ここに、私が持っている『梵字の書道教本』を紹介し、私が見つけた『梵字の書き方のポイントとルール』を記述するのがベストなのですが、
1.流儀によって漢字より遥かに書き方が、そして画数までもが異なる事
2.梵字は一画が非常に長い
3.梵字は漢字のように全ての画が「上から下」、「左から右」とは限らないとともに、折り返しの表現が非常に難しい
などの理由で、私は私なりの梵字の書き方のポイントとルールを持っていますが、まだ私にはここに表現する事ができません。
平成28年秋彼岸塔婆の為に、五大、kya ka ra ba a を手本を元に今までの書き方を見直して書いた一本です。(智満流)
平成30年春彼岸塔婆の為に、別の手本(澄禅流)を元に書きました。
一文字目 kya字 を除いて、各梵字の一画目(左上部)が特に智満流とは大きく異なります。まだまだ精進いたします。
祖父である 廿八世 融厳和尚が書いた本尊様 十一面観世音菩薩の種字。
澄禅流と思われます。これはデジタル加工をして、当サイトのファビコンに活用しています。
同じく融厳和尚の書いた昭和36年の白木の位牌の地蔵菩薩の種字。
これも、澄禅流と思われます。
☆平成29年2月、寺務室に塔婆建てを作り付けで作成しました。便利!!
塔婆1本1本に、中央線を引く事は出来ないので、板目を見ながら中心線を自分の中で見つけて書くようにします。
塔婆上部の切り欠きと梵字の配置を、自分なりに決めて書きます。すると揃った梵字が塔婆に書ける様になります。
例えば上に『大』、その下に『小』と書く場合には、小の一画目は大の二画目と三画目に食い込むように書けば、上下を詰めて書くことが出来ます。間延びした塔婆にならない為には、上下の文字で詰め書きが出来るよう工夫が必要です。
角塔婆の一面の実寸を計り、四分の一や三分の一の練習用紙を作成し、まずその紙でバランス、上下の文字の詰め方などを研究します。その後、実寸大の練習用紙を作って、練習してから本番に臨みます。
當山の供養搭 (別windowで開きます)で写真を付けて説明をしています。なお、この角塔婆は、平成23年に書いたもので、今まで説明してきたポイントとルールが適用出来ていない所【観の文字の見の部分の書き方など】が有ります。見の部分の書き方は、この供養塔を書いて以降に気付いた事です。
先にも述べましたが、「自分の気に入った『筆文字』」や「自分の気に入った『筆文字を書く人』」を見つけて、その筆文字を徹底的に真似るのも、上達への近道です。
また、立ち寄った店舗、事務所や診察室に掲げられている賞状や感謝状、認定証などにも、そして、テレビ時代劇の映像の中にも「なるほど!」と気づかせてくれる筆文字があなたを待っているはずです。
活字の明朝体、ゴシック体は、印刷の為に特別にデザインされた字体です。毛筆で文字を書く場合には絶対に参考にしてはいけません。
左右対称、天地・左右いっぱいのデザインで接筆など毛筆には相応しくない表現ばかりだからです。
また、パソコンの活字の毛筆フォントも一見参考になりそうですが、例えば
HG正楷書体PRO 口見 は良く見ると、筆文字のお手本にはなりません。
『口』の三画目の始点は、一画目の下端より少し上に接するように書き始め、終点は、二画目の下を通り、二画目より少し右に出るように書きます。参照 Tips001 (口)
『見』の "目" の部分の一番下の横画は、一画目より左から始まって一画目の下を通らなければなりません。参照 Tips001 (見)
これらは氷山の一角で、パソコンの活字の毛筆フォントには、本当の筆文字には相応しくない書き方が随所にあります。毛筆フォントの どの文字のどこが相応しくないのかを、見極める必要が有ります。
ある筆文字の知らなかった画の書き方が、知っている画の書き方になる事を楽しんでください。今までの書き方が、どう間違っていたかを、書道教本を片手に、そして実際に筆文字を書きながら気付いてください。
手本の筆文字の見方に気付いてください。そうすれば筆文字は上手になります。まだ私自身も発展途中ですが、『接筆』と『気付き』がキーワードです。 最後までお読みいただきありがとうございました。
合掌
令和2年9月19日 Tips011:工 上 下 追加
令和2年2月24日 Tips010:羽 比 林 追加
令和2年1月15日 Tips009:寺 時 等 追加
令和元年8月 9日 Tips008:大進美増 追加
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